SNSで目にした“信じられない光景”
ある日、何気なくSNSを眺めていた私は、ある投稿に目を奪われました。
そこにあったのは、「猫のディクロー手術をした」という内容。
「家具を傷つけられたくないから」「安全のために仕方なかった」――
そんな理由とともに、猫の小さな足が映った画像が添えられていました。
「え?何これ。まさか、爪を取るって、どういうこと?」
信じられない気持ちで投稿を読み進めるうちに、怒りと悲しみがこみ上げてきました。
かわいい猫を飼うはずが、都合の悪いところだけを排除する。
そんなことをするくらいなら、「猫なんて飼うなよ」と強く思ったのを覚えています。
さらに調べていくと、「ディクロー」という行為は、爪を単に短くするものではなく、第一関節ごと切除する手術であることを知りました。
海外では動物虐待として法律で禁止されている国も多い中、日本ではいまだに合法だという事実にも驚かされました。
なぜ、こんなことが許されているんだろう。
そもそも、「猫の爪を取る」ってどういうこと?
この記事では、ディクローの実態と、それを取り巻く現実について、一緒に考えていきたいと思います。
そもそも「ディクロー」って何?
「ディクロー(Declaw)」という言葉を、あなたは聞いたことがありますか?
直訳すると「爪を取り除く」という意味ですが、その実態は想像以上に残酷なものです。
多くの人が「深爪」や「鋭い爪の先を切ること」と勘違いしていますが、実際にはまったく違います。
ディクロー手術とは、猫の前足の爪を、第一関節ごと外科的に切除する手術です。
爪を根元から抜くのではなく、「爪ごと骨の一部を切断する」という、れっきとした外科手術。
人間に置き換えると、指の第一関節から先をすべて切断されるようなものだと言われています。
この手術は猫にとって大きな負担を与えます。
術後は、激しい痛みや出血を伴い、数日間歩けなくなるケースもあります。
また、バランス感覚や行動パターンが大きく変わり、ストレスや不安から問題行動(噛み癖、トイレの失敗など)を起こすことも少なくありません。
さらに深刻なのは、猫にとって「爪」は単なる道具ではなく、生きるために必要な身体の一部だということ。
爪は木に登るため、身を守るため、気持ちを落ち着けるため、そして猫らしくあるために必要なものです。
それを人間の都合で奪うことは、「猫らしさ」を根本から奪ってしまうことにもつながるのです。
なぜそんなことをするのか?
ここまで読んで、「そんなひどいこと、どうしてするの?」と感じた人も多いのではないでしょうか。
実際、ディクローを選ぶ飼い主の多くは、猫を傷つけたいという意図があるわけではありません。
むしろ、「仕方がない」「愛情ゆえの決断」だと思い込んでいるケースも少なくないのです。
よくある理由のひとつは、「家具を傷つけられたくないから」。
お気に入りのソファや壁紙が爪とぎでボロボロになるのを防ぎたいという気持ちは、理解できなくもありません。
また、「子どもが引っかかれて怖い」「高齢者と一緒に暮らしていて危ない」といった安全面を理由に挙げる人もいます。
さらに、特にアメリカなどでは過去に、獣医がディクローを“選択肢の一つ”として勧めていた背景もあります。
そのため、悪意というより「当然の処置」「問題の解決策」として受け止められてきた面もあるのです。
しかし、どんな理由であれ、猫の身体の一部を奪うことが正当化されていいのでしょうか?
問題は、こうした選択が「飼い主側の都合」に偏っていること。
爪とぎが嫌だから、引っかかれるのが怖いから、というのはすべて人間の視点。
「猫を迎える」ということは、本来、猫の特性や習性も含めて受け入れることのはずです。
都合の悪い部分だけを排除する関係は、本当に“共に暮らす”と言えるのでしょうか。
ディクローをしなくてもできる工夫と対策
「爪が危ないから」「家具が傷つくから」――
それがディクローを選ぶ理由だとしたら、私たちは他の方法でその悩みに向き合えないでしょうか?
実際には、ディクローに頼らなくても猫と快適に暮らすための工夫はたくさんあります。
🛠爪とぎ対策の見直し
猫は本能的に爪とぎをします。
でも、爪とぎの場所や素材が合っていないだけで「壁でやる」「家具でやる」となるケースが多いんです。
- 縦型・横型・段ボール・麻など、猫の好みに合う素材を探す
- 部屋の複数箇所に設置して、爪とぎの「選択肢」を増やす
- 家具の近くに設置して、「家具じゃなくてこっちで」と誘導する
✂️爪のケアとトレーニング
- 定期的に爪切りをすることで、引っかかれるリスクを下げる
- 少しずつ慣らせば、ケアできるようになる猫も多い
- 獣医やトリマーに相談するのも安心な方法です
🛋家具・生活環境の工夫
- ソファや壁に貼る「爪とぎ防止シート」や「カバー」を活用
- 猫可・対策済みの賃貸物件を選ぶ
- 原状回復費用を事前に確認しておくとトラブル回避に◎
🌿猫のストレスケアも大切
- 十分に遊んで運動不足を防ぐ
- キャットタワーや高低差のある環境を用意する
- 隠れ場所や落ち着ける空間も整える
ディクローは“最終手段”ではなく、“しなくてもいい手段”なんです。
少しの知識と工夫で、猫にも人にも優しい暮らしはつくれます。
猫はモノじゃない。共に生きるとはどういうことか
ディクローという行為を通じて、私が一番強く感じたのは、
「猫は人間の所有物ではない」という、あたりまえのようで忘れられがちな事実です。
可愛い。癒される。見ているだけで幸せ。
そんな気持ちは、猫と暮らしている人ならきっと誰もが持っているでしょう。
でも、どこかで「思い通りにならない部分は変えればいい」と考えていないでしょうか?
「壁を傷つけられたくないから、爪を取る」
「噛まれるのが嫌だから、性格を変えようとする」
そうした発想の裏には、猫を“人間の生活に合わせる存在”と見る視点があります。
だけど、猫はロボットでも、インテリアでもありません。
自分の意志を持ち、感情があり、身体の仕組みを持った命ある動物です。
猫と暮らすとは、「猫らしさを理解し、受け入れること」。
人間の都合に合わせるのではなく、お互いが歩み寄って共に暮らすことだと思うのです。
猫はモノではありません。
愛情を注げば、ちゃんと返してくれるし、共に生きる喜びを教えてくれる存在です。
だからこそ、一方的な管理ではなく、信頼と理解の関係を築いてほしい。
まとめ:知らなかったなら、知ってほしい。知ったなら、考えてほしい。
「ディクロー」という言葉を初めて目にしたとき、私は心底驚き、怒り、そして悲しくなりました。
猫を飼うというのは、愛情や覚悟があってこその行為だと思っていたからです。
調べれば調べるほど、その実態は想像以上に残酷で、
それがいまだに日本では合法であることに、さらに大きな衝撃を受けました。
一方で、海外では禁止されていたり、動物福祉の観点から問題視されている国も少なくありません。
もしこの記事を通して、
「ディクローってそんな手術だったのか」
「爪を取ることの意味って、こんなに重いんだ」
と感じてくれたなら、それだけで書いた意味があります。
猫と人間が共に暮らすということは、
人間の都合だけで形を変えるのではなく、違いを受け入れながら暮らすこと。
その第一歩は、「知ること」。
そして、「考えること」。
猫は私たちの“モノ”ではなく、
ともに生きる“パートナー”であることを、忘れないでいてほしい。



コメント